新都市生活研究所では、茨城県の産直養豚農家である株式会社山西牧場と提携。タワーマンション内で山西牧場のブランド肉や加工肉の試食・販売会のサービスを提供しています。特に、丹精を込めて作ったベーコンの試食では、住民の方々が思わず「美味しい!」と言っていただけるほどの質の高い体験を提供できました。
2022年3月12日のSKYZ TOWER&GAEDENコミュニティハウスで行われたイベントの後に、株式会社山西牧場代表取締役倉持信宏さんにインタビューを実施いたしました。
ー倉持さん、よろしくお願いいたします。倉持さんは養豚農場の経営をしながら、直販ECサイトにもチャレンジされていて幅広いご活躍ですね。
ありがとうございます!多角化経営のことはよく聞かれますが、実際のところは、私自身に体の問題(アレルギーなど)があり、先代から受け継いだ養豚場での現場作業などには十分従事できなかったところから始まっています。
現場に出られない分、他の分野にも取り組んでいかなくてはと強く感じていました。弊社は相当肉質にこだわっておりますが、現状の流通形態だと、農場単位での豚肉のこだわりを消費者まで届けるのが難しくなっています。「自社農場の豚肉、味へのこだわりを直接消費者に届けて知っていただきたい」とEC直販への取り組みを始めました。
-山西牧場のブランド豚について教えてください
我々の農場では自社農場生産の豚肉を「三右衛門/3 é mon」というブランドで展開しています。「三右衛門」は先代が作り上げてきた精肉に、「3 é mon」はその豚肉や豚由来の素材を生かした加工品に冠しています。どちらも同じ読み方なのですが、加工品は私が引き継いで初めたものなので、あえて英字を当てることにしました。
他には茨城県産のブランド豚「常陸の輝き」の生産にも参加しています。
-「飲める脂」というキャッチフレーズ、すごいですね。私も実際に食べてみて美味しさに感動しましたし、イベントでも住民から大好評でした。どうしてこんなに豚の臭みがない、美味しい豚肉が作れるのでしょう?
我々の豚肉は何よりも餌に重きを置いております。自社指定配合のシンプルで、高品質な穀物飼料です。ここに一番大きなコストがかかっています。
この餌へのこだわりは先代の「餌が脂を作り、肉の味は脂で決まる」という言葉が柱になっています。
他には月に一度、実際に市場に肉を見に行ったり、脂肪酸の測定をして適宜モニタリングをしながら調整しています。品種も餌も環境も、特別なものはありませんが究極のスタンダードとなる豚作りを大切にしています。
ー加工品、餃子やベーコンも作られていて、こちらも大人気でしたね。
嬉しい限りです!
加工品についても私自身が研修させていただいたり、見学させていただく中で、ここの技術、ものづくりが素晴らしいなと感じた工場や工房さんに直接依頼して、丁寧にお作りいただいています。
例えば、今回のイベントで試食にお出ししたベーコンは調味液を注射する一般的なやり方とは対照的な「乾塩法」という製法で作られています。
塩を直接肉に刷り込んで寝かせるという昔ながらの製法で、水分が抜けて収量が減ったり、味の浸透に時間がかかる…つまり非効率なわけですが、その分肉の質感そのままに旨味が凝縮された「素材の味を引き出す」そんなクラフトベーコンが出来上がります。
一つ一つが美味しさを大事に、細かく丁寧に作られているものばかりです。
素材である肉とこだわりの製法、どちらも伝えていって本当に美味しいものを提供していければいいなと。
-今回展示されていましたが、化粧品も作られているんですね。
はい、こちらは分娩時に採取されるブラセンタ(胎盤)を使用しています。
「豚の全てを価値に、豚の可能性を広げたい」というコンセプトで経営しておりますので、活用されず捨てられてしまっていた胎盤を活用して、より良い物作りができないかと考え、2年の試行期間を経てようやく完成しました。
農場側では採取後すぐに洗浄、匂いの元になりやすい血液や汚れを除去し、冷凍保存という原料へのアプローチを行い、そして製造部門においては高配合率にこだわった処方(ローション3%、エッセンス30%)や防腐剤・アルコール・香料フリーでシンプルさを大事に作りました。品質に関しては広告費を相当かけている一流化粧品メーカーには負けていないクオリティでご提供できています。
-新都市研からのお話、最初どう思われました?
そうですね、今まで一度も入り込んだことがない商圏でしたが、感度の高い方々にアプローチできるイメージがあり、すごく興味を持ちました。それで、すぐにやろうと。話が決まってから早かったですね。
-共用施設でのイベント、住民からの実際の反応はいかがでしたか?
これはもう想像以上でした!
私も過去、イベントを様々やってきたのですが、これほどまでに立ち止まってくださってかつじっくり話を聞いてくださる。これだけでもまず感動するのですが、更にどんどん購入までしていただける…商品と価格に対して、ここまで場所がフィットしたという感覚は今までにないものでした。
普段ショッピングセンターや商業施設で行う営業とはまるで違います。お客様が警戒心がある状態からスタートするので、試食してもらえない。試食して美味しいと感想をいただいても、財布の紐は固く、購入していただけない。…かなり徒労感を感じていました。
みなさんが実際に暮らしているその場で実食を提供できるからこそ、安心してゆっくり話を聞いてくださる。もうこの入り口からして違います。イメージとしては百貨店の外商サービスに近いのではと感じました。自宅のソファーに座りながら警戒を解いているからこそ、きちんと話を聞いていただけるし実際に買っていただける。それと似た構図がマンションの共用施設でのイベントだと思いましたね。今回は、クラフトビールとのコラボイベントでしたが、肉とビールの相性が抜群に良くてみなさんに喜んでいただけました。
-ぜひ次回もお願いします
はい、ぜひ!
倉持伸宏 | Nobuhiro Kuramochi
株式会社山西牧場代表取締役
1990年生まれ。明治大学農学部卒。家業の三代目として有限会社山西牧場に入社。屠殺場、ハム工場での研修を経て自社生産豚肉の販売事業・OEMでの加工品制作に着手。2020年3月に農場直送ブランド「三右衛門/3 é mon」を立ち上げる。
飲料とのペアリングだけでなく、山西牧場さんのブランド肉や加工肉をマンションの皆さんにご紹介するコンテンツの可能性を探っていきます。
文:池崎(新都市生活研究所代表取締役)
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イベントのご紹介
・産直農家の豚肉とクラフトビールの掛け合わせ体験(SKYZ TOWER&GARDEN/BAYZ TOWER&GARDEN)
一緒にイベントを開催したクラフトビールのサブスクリプションサービスご紹介
・サブスクリプションのクラフトビール体験(meuron株式会社)