「災害への備え」の重要性は頭で理解していても、日々の忙しさの中で具体的な行動に移すのは難しいものです。特にタワーマンションをはじめとする大規模建築物では、構造上の安全性(建物の無事)が高い反面、エレベーターの停止による「孤立」や、ライフライン寸断時の「在宅避難の長期化」という特有の課題が生じます。
内閣府の防災基本計画によると、大地震が起きた直後、行政による救助が本格的に機能するまでに3日~1週間かかるとされています。この空白の期間を生き残るには、居住者同士が助け合う「共助」が欠かせません。
平成26年版の防災白書には、興味深いデータが記載されています。東日本大震災の事例から、以下のことが判明しました。平時から地域活動に積極的に参加している人ほど、大災害時には孤立しにくく、支援や援助を受けやすい傾向があるということです。つまり、日頃から地域コミュニティとのつながりを深めることが、防災力を高めるために重要だということが分かります。
こうした背景を見据え、芝浦アイランドグローヴタワー管理組合法人と東京消防庁の皆様のご協力のもと、2026年3月14日に「防災訓練」と、訓練参加者限定の「住民懇親BBQ」を同日開催しました。1階の中庭やガーデンエントランス、パーティールームなどをフルに活用し、ただ学ぶだけでなく、自然に隣人と顔見知りになれる仕掛けを取り入れた当日の模様をお届けします。

お子さんからご高齢の方まで、多くの方にご参加いただきました。不慣れな消防服に戸惑いを見せるお子さんの姿も
今回の訓練で最も大きな役割を果たしたのが、参加者を「近隣フロアごと」に分けた5つのグループ編成です。このグループ分けにより、最初のプログラムへ移動する段階から、自然と「あ、同じフロアの方ですね」といった会話が生まれるきっかけがデザインされていました。プログラムはいざという時に身体が動くようになるための実戦的な内容です。私もグループのひとつに同行しながら、以下6つの体験プログラムを見学しました。
・避難訓練
・初期消火訓練
・三角巾訓練
・起震車による地震体験
・煙ハウスによる煙体験
・AEDによる救命訓練
〈避難訓練〉日常空間が”命綱”になる
まずは建物からの避難訓練。参加者は中庭に集合し、非常時の避難経路と集合場所を実際の足で確認しました。毎日使う共用廊下やエントランスが「もしものとき」の動線と重なるとき、その見え方がすこし変わる気がしました。
〈初期消火訓練〉狙いを定めていざ発射!
消火器は初期消火の成功率が7割以上と高く、非常に効果的な器具です。しかし、一般家庭での使用体験率は極めて低いという課題があります。
今回は、ゲーム感覚で的を狙う訓練に挑戦。「意外と狙いを定めて充てるのは難しい」という言葉をお聞きしました。
指導にあたった消防署員の方からは、「万が一の時は、子どもだけで消火しようとせず、まずは大声で周囲に火災を知らせて逃げることが最優先」という、命を守る原則が伝えられました。

消防署の方の指導を受けながら的へ狙いを!

コツをつかみ、狙った位置まで飛ばすことに成功!
〈三角巾訓練〉いざというときのために!
三角巾訓練では、負傷者の応急手当として三角巾を使った腕の固定方法などを学びました。身近なものでできる応急処置の大切さを学ぶ、貴重な時間となりました。
訓練後、参加者から「こういうのって、いざやろうとすると全然思い出せないんですよね」という声が聞かれました。この感想こそが、定期的な訓練がいかに重要かを改めて教えてくれています。

これが災害時にどのように役立つのかと興味津々に消防署の方の指導を聞いています
〈起震車による地震体験〉震度7の揺れは、「想像」を超えてくる
続いて、最もインパクトの大きかった起震車による地震体験。震度7の激しい縦揺れ・横揺れを体感した参加者の皆様は、一様に言葉を失うほどの衝撃を受けている様子でした。なかには、揺れの激しさに本能的な恐怖を感じて泣き出してしまう小さなお子様も。
東京消防庁でも指摘されている通り、タワーマンションの上層階では長周期地震動によって家具の転倒リスクがさらに高まります。
身の安全を守るための「家具の固定」がどれほど重要かを、五感を通じて再確認する機会となりました。

震度1から徐々に大きくなる起震車。改めて地震の怖さを体感していました
〈煙ハウスによる煙体験〉煙は「見えないうちに」迫ってくる
植物性オイルから発生させた安全な蒸気で、火災時の視界不良を再現するプログラムです。
消防庁の消防白書(令和6年版)によると、火災による死因は火傷(35.6%)が最多ですが、一酸化炭素中毒・窒息も29.8%と約3割を占めています。「炎より煙が怖い」という現実を、数字だけでなく体感として受け取れる内容でした。
「煙は下から上昇するので、姿勢を低くして避難してください」という消防署の方のアドバイスは、頭では知っていても、実際に煙の中に入ると一層リアルに刻まれます。

続々と煙ハウスに入っていきます
〈AEDによる救命訓練〉「知っている」と「できる」は、まったく違う
AED訓練では、実際に人形の胸を圧迫する体験が行われましたが、日本医師会が推奨する「1分間に100〜120回」のペースと、胸が約5cm沈むほどの強さを維持することの難しさに、参加者の皆様が想像以上の体力を要することを実感されていました。「知っている」と「できる」の間にある高い壁を、体験によって乗り越えていく姿が印象的でした。

AEDの使い方について具体的な説明をいただきました

お子さんも実践!消防署の方からマンツーマンで教えてもらいながら、いざという時のためにAEDの使い方をマスターしました
〈住民懇親BBQ〉焼肉の煙が、距離を縮める

快晴に恵まれた中でのBBQ。食材を囲みながら多くの交流がみられました
しっかり身体を動かして訓練を終えた後は、お待ちかねの「住民懇親BBQ」がスタートしました。会場となったテラスやパーティールームには、焼きたてのお肉の良い香りが広がり、一気に和やかなムードに包まれます。
このBBQで印象的だったのは、自然な会話の広がりでした。同じグループで恐怖や難しさを共有しながら訓練を受けた、その経験が生んだ安心感のおかげか、どのテーブルでも他愛のない雑談が生まれていました。こうした雑談が、暮らしを豊かにしていくのだと感じます。子どもたちも同じでした。気がつけば中庭を駆け回り、他のご家庭のお子さんを下の名前で呼ぶようになっていたのです。その光景を見守る大人たちも、いつの間にか距離が縮まっていました。
同じ建物に住む個々の家庭の備え(自助)をベースにしながら、コミュニティという網の目を張り巡らせる(共助)。これこそが、これからの時代の大規模マンションに求められる本当の価値(防災力)なのだと、集まった皆さんの笑顔が証明してくれていました。
芝浦アイランドグローヴタワー管理組合法人の皆様、そしてご参加いただいた住民の皆様、素晴らしい時間をありがとうございました!
主催:芝浦アイランドグローヴタワー 管理組合法人
共催:株式会社新都市生活研究所
文:かっちゃん
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